表彰式の様子 審査講評

表彰式の様子

■大臣賞表彰式

本年度も昨年に続き、文部科学大臣賞のお二人を招待し、都内の会場にて表彰式を行いました。

表彰式

■開催日時

2025年 3月 28日(金)

■開催場所

東武ホテルレバント東京3F「藤菊」

■式次第

  • 1.開式
  • 2.コンテスト実行委員長挨拶 脇宏文
  • 3.来賓紹介
  • 4.審査委員長挨拶 石隈 利紀 様
  • 5.文部科学大臣賞表彰 小学生の部 瀬尾 龍暁紀 さん
  • 6.文部科学大臣賞表彰 中学生の部 濱部 幹太 さん
  • 7.来賓祝辞 池田 真信 様
  • 8.閉式

■ご来賓

  • 文部科学省 初等中等教育局児童生徒課生徒指導調査官 池田 真信 様
  • 漫画家(代表作「Dr. コトー診療所」) 山田 貴敏 様
  • 福山市PTA連合会 会長 野田 寿雄 様
  • 福山市PTA連合会 事務局 林 千里 様
  • 熊本市PTA協議会 副会長 原田 英之 様
  • 熊本市PTA協議会 事務局 髙梨 沙織 様

■文部科学大臣祝辞

第十八回いじめ防止標語コンテスト 文部科学大臣祝辞

第十八回いじめ防止標語コンテストが、多数の応募のもとで開催されましたことに、心からお祝い申し上げます。
そして、この度受賞された皆さん、おめでとうございます。
第十八回を迎えた本コンテストにおいて、皆さんの作品はいずれも、日頃からのいじめに対する強い問題意識が感じられるとともに、いじめの防止・根絶を呼びかける強いメッセージが伝わってくる作品であったと思います。

いじめは決して許されるものではありません。この場にいる皆さんも、同じ思いを持っていると思います。しかし、報道等がされているとおり、現実には深刻ないじめが起きております。
いじめを生まない環境をつくるためには、何よりも児童生徒の皆さん一人一人の力が不可欠です。是非、参加した皆さんにおかれましては、今回受賞されたいじめの防止に向けた標語を、学校に持ち帰り、いじめを生まない環境づくりに役立ててください。

皆さんのこれからの人生においては、いじめの問題への向き合い方と同様、様々な問題を自分事として捉えて、行動していくことがとても大切になります。皆さんが成長する中で、勇気と責任感を持ち、仲間や自分を大切にできる大人になることを、心から楽しみにしております。

結びに、これまで熱心に指導してこられた先生方や御家族の方々など、受賞者を支えてこられた皆様、及び開催に御尽力された関係の皆様に心からの敬意と謝意を表しますとともに、今後の一層の御発展を祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。

令和七年三月
文部科学大臣 あべ 俊子

■表彰式の様子

コンテスト実行委員長挨拶

コンテスト実行委員長挨拶

審査委員長挨拶

審査委員長挨拶

小学生の部瀬尾龍暁紀さん

小学生の部瀬尾龍暁紀さん

中学生の部濱部幹太さん

中学生の部濱部幹太さん

文部科学大臣祝辞(代読)

文部科学大臣祝辞(代読)

表彰式の様子
表彰式の様子
表彰式の様子
表彰式の様子

審査委員である漫画家の山田貴敏先生から、似顔絵のプレゼントがありました

審査講評

コンテスト審査委員長 石隈利紀先生

東京成徳大学応用心理学部特任教授
学校心理士認定運営機構理事長
こども家庭庁いじめ調査アドバイザー

今日も、いじめは私たちの身近で起きています。みなさんがいじめ防止標語の作成を通して、いじめについて考えたり、学校や家庭で自分の考えを共有したりする時間は、とても貴重だったと思います。今回の審査の印象をお伝えします。1つはいじめを自分事としてとらえ、いじめを防止する行動についての標語です。受賞作「思いやり 思うだけでは 意味がない」からは、人は優しさや共感をもつだけでなく、周りを変える行動を起こそうという強いメッセージが伝わりました。もう1つは、いじめを行った自分自身の後悔と決意についての標語です。受賞作では「親友をいじめてしまった」ことを後悔し、親友が仲直りしてくれて、今後は「過ちを正せるように」頑張るという心からのメッセージです。今回の応募作から、行動の力、やり直す可能性について、学びました。私たちは自分を変えることも、周りを変えることも、未来を変えることもできることを、みなさんと共有したいと思います。

審査委員 品川裕香先生

教育ジャーナリスト
株式会社薫化舎取締役副会長
元文部科学省中央教育審議会委員

いじめ防止標語コンテストは18回目を迎えました。39万4335作の中から見事に入賞された皆様、本当におめでとうございます。
全国の小・中学生の皆さんからご応募いただく多数の標語を、18年間続けて拝読していますといじめの定義や手口、特徴などが時代とともに変遷していることがよく分かります。
このコンテストが始まった2007年の頃は「いじめる人は確かに悪いけれど、いじめられる人にも原因がある」という考え方が主流でした。それがコロナ禍前後くらいから、いじめの原因は「多様性を認めないこと」「個性を認め合わないこと」等と指摘する声が増え、標語にもそういったことを訴えるものが目立っていき、今では当たり前になった感があります。加害者についても「いじめる人だけでなく、囃し立てる人や傍観者も加害者だ」という考え方が18年かけてしっかり定着し、こちらも今では当たり前のことになりました。近年はさらに踏み込んで、保護者や教師に対して「見て見ぬ振りをしないで」「(自分からは言えないのに)どうして助けてくれないの」「いじめをなくすのは大人の仕事」と具体的なSOSをあげる声が増えてきました。当初から私は“いじめは集団に発生する暴力で反社会的行動で、家族や学校、地域の組織経営を望ましくすることは必須”と考えていますので、こういった移り変わりを心強く思っています。
そんななか、今年は送ってくださる地域に関わらず、これまでにはあまり見られなかった「死ね(と言われた)」「(死ねと言われるけど)自分は生きていたい」など生命にかかわる苛烈な言葉が多数登場しました。私は言葉を失いました。そんな言葉が使われていたどの標語からも作者が血と涙を流しながら作ったであろうことが伝わってきて、私の心に棘のように突き刺さったからです。その一方で、綺麗で分かりやすい言葉を連ねてまとまりのよい上手な標語を作った人もたくさんいましたが、そういった標語が私の胸に刺さることはありませんでした。
誰だって「いじめはやってはいけない行為」だと知っています。加害行為をする人もそれくらい知っています。問題は「いじめはダメだ」とみんながわかっているのに、「いじめが発生する」ことです。他者を攻撃し、人権を踏みにじる人が一向に減らないのはなぜなのでしょうか? これは加害行為をする人だけの問題なのでしょうか?  私はそうは思いません。
いじめは遠い誰かの問題ではなく、間違いなく日本中のすべての人、私たち全員の問題です。答えは簡単には見つかりません。ですが、標語には読んだ人に気づきを与えるという、とても重要な役割があります。だからこそ、標語をきっかけにこれからもどうすればこういった暴力を減らしていけるか、一緒に考え続け、行動していきたいと考えています。

審査委員 山田貴敏先生

漫画家(『Dr.コトー診療所』著者)

今の社会環境が変わったように、コンプライアンスの面で言えば、ますます線引きの難しい時代になったとつくづく思い知らされる昨今です。

ではいじめの線引きはどうなのでしょう。
今回の応募作ではイジるとかノリという言葉が多く使われていたような気がします。
ノリで言ったことなのに、イジっておまえも笑っていたじゃないか、そういう子たち、あるいは先生方でさえそれがいじめなのかどうかの判断がつかない場合もあると思います。
でもその言葉で傷ついている子が多いこともわかりました。繊細過ぎるという方もおられるでしょう。
前ならこれくらい許された。そういう認識の大人の方も少なくないのではないでしょうか。
でもそれが許されない時代なのだとぼくは思っています。
まず、子どもたちに言いたいことは、イジったりノリ突っ込みをやる芸人はプロだということ。イジられるためのプロセスをちゃんと考えて笑いに変えているということ。それは勝手に他人に押し付けてノリが悪いというのは、ただの無神経ないじめに他ならないということ。
他の生徒を笑わせたかったら、自分で笑わせたらいい。他人を使って笑いを取るなんていうのは、笑われているのを喜んでいるだけだということ。笑わせるのと笑われるのでは天と地ほどの差があることを知ってほしい。
プロの芸人ですら、その言葉の使い方で仕事がなくなることもある。そのことはみなさんも知っていると思います。
SNSが普及して、テレビよりも影響力を持つようになりました。みんなでよってたかって誰かをたたく、それが可能な時代になって、より言葉一つに慎重にならざるを得ない時代です。
これがいじめじゃないか。そうとる方もおられるでしょう。

ですから今、子どもたちを含め大人も言葉の線引きを考えなくてはならない。
長年このコンテストを通じていじめ防止というものを考えてきましたが、今もう一度審査する立場の我々も根本から考え直す時がきたのではないか。そう思える今回の審査でした。