表彰動画 審査講評

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審査講評

審査委員長 石隈利紀先生

東京成徳大学大学院教授、一般社団法人 学校心理士認定機構 理事長

この度は「いじめ防止標語コンテスト」に参加していただきありがとうございます。心から感謝申し上げます。
ご存知のように地球上では様々な葛藤があります。格差があります。暴力や窃盗もあります。私たちの周りにはいじめの問題があります。
今回皆さんと一緒に、「いじめを防ぐ」ということを考えました。時間を取って「いじめを防ぐ」ことについて考えていただいた皆さん、ありがとうございます。そして、それを支えてくださった保護者の皆さんや先生方に心から感謝申し上げます。

皆さんの作品に見えた3つの特徴をお話したいと思います。
1つ目は、「SOS」、「異変に気付く」ということです。困った時にはSOSを発信できれば良いと思いますし、友達として大人としてSOSを受け取る力がとても大事だと改めて気付きました。
2つ目は、皆さんの作品の中には「良いところを褒めよう」、「それいいね、とお互いに言おう」という作品がたくさんありました。お互いが認め合う、これはとても大事なことです。
3つ目は、「誰にもいじめ心はある」「相手を攻撃したくなることもある」、それを「少し立ち止まって考えよう」。考える力がいじめを防ぐことに繋がる、これはとても大事な考え方だと思います。
皆さんの多くの作品の中から私は希望を持つことが出来ました。いじめを防ぐ、そして平和な世界を目指して一緒に進んで生きたいと思います。
皆さんのご参加、そして周りの方たちのご協力に感謝いたします。本当にありがとうございました。

審査委員 太田裕子先生

聖徳大学大学院 教職研究科 教授

いじめに真摯に向き合った受賞者の皆さん、入賞おめでとうございます。
今年も皆さんからのメッセージを受け取り、審査させていただきました。
いじめ問題への解決のために、毎年、多くの小・中学生の皆さんが取り組んでくださっているのに、いじめの報告件数は、昨年度も、全国で61万5351件に増え過去最多となったと、文部科学省からの報告がありました。特にいじめによる自殺や不登校などの「重大事態」は前の年度から191件増えて705件となり、過去2番目となっています。
報告件数が増えている一方で、私たち大人からは、いじめの実態が年々見えにくくなってきています。そうした状況においていじめ防止のメッセージを自ら発すること自体、大変勇気のいることではなかったかと思うのです。受賞された皆さんはもとより、応募されたすべての皆さんの、その勇気を称えたいと思います。
今、世界では、戦争や内紛が多発し、暗澹たる状況となっています。そんな中、皆さんの標語は、いじめ問題だけでなく、社会全体の課題を鋭く突き、これからの人としての生き方・考え方をしっかりと示してくれるものばかりでした。
皆さんの標語がきっかけとなって、学級や学校のみならず、社会・世界がよりよく変わっていく原動力になるように、私たち大人もがんばって行きたいと思います。

審査委員 品川裕香先生

教育ジャーナリスト・(株)薫化舎 取締役副会長

いじめ防止コンテストも第16回目を迎えました。入賞された皆様、おめでとうございます。
今年も全国から大変多くの作品をご応募いただきました。どの標語からも悲しみや悔しさ、怒り、戸惑いなど書き手の強く熱い思いが立ち上り、私はその一つ一つに胸を痛めたり、一緒になって憤ったりしながら拝読し、選考いたしました。
なぜ、いじめはなくならないのか?
どうしたら少しでもいじめをなくせるのか?
誰もが抱えるであろうそんな疑問に対して、過去16年にわたって、この標語コンテストにはたくさんの提案がなされてきました。いじめはダメだという意識を共有すること、規範を強化すること、多様性を認め合うこと、仲間意識を持つこと、被害者に寄り添うこと、子どもも大人も一致団結していじめに立ち向かうこと……。そのようななかで、今年は加害者がなぜ加害行為に陥るのか、そこから見ていくべきではないかという趣旨の標語が複数あり、嬉しく思いました。というのも、私は加害行為をする人たちを責めるだけではいじめをなくす抜本的な解決策にはならないのではないかと考えているからです。明日は自分も加害者になるかもしれない。そんな想像力がいじめをなくしていくためには必要なのではないでしょうか。
戦争やパンデミックといった予想できない事態の恒常化に加え、高度なAIやロボット、仮想空間が日常となるなど、私たちの生活は秒単位で劇的に変化していっています。今後、そういった社会変容に対応できる人とできない人の間で、これまで以上に目に見える形での格差が広がっていくかもしれません。そうなった時、人々の心の底には漠然とした不安や不満が澱のように沈殿していき、ますます苛立ちが募っていきやすくなるかもしれません。
だからこそ、標語、つまり言葉が大事だと私は思うのです。私たちは言葉で考え、行動を決めていきます。これからも言葉の力を信じ、いじめに対して何ができるのか、一緒に考えていきたいと考えています。

審査委員 山田貴敏先生

漫画家(『Dr.コトー診療所』著者)

やはり今年も傍観者的な立場で語られた標語が多かったように思います。
いじめを見た時、すぐに止めに入る人たちばかりならいじめも広がらないと思います。
いじめはダメだ!と言うだけではいじめはなくなりません。
また、いじめられている子たちの悲痛な叫びの標語はリアルに書かれているように思いました。前回も応募作品にありましたが、「いじる」と「いじめ」の境界線が曖昧で、周りが笑えば言った方もいじめではないと認識してしまう危険があります。バラエティ番組でいじられキャラと呼ばれる人達は、あくまでもプロと呼ばれる人です。見ている人みんなが笑えるような腕を持った人達です。同じことを教室でやってしまうのは本当に危険で、簡単にいじめになり得るのです。皆で自覚していくことが大切だと思いました。
受賞された皆さん、おめでとうございます。みなさんから学校で、教室で、いじめ防止の発信をしていってください、期待しています。